「悪かったって! 頼むから犯罪者を見るような目すんなって」

「え? 犯罪者でしょ?」

「すいませんでした姫様。病院まで送るから、せめてその扱いは勘弁してください」


そう頭を下げた悠馬。

私は「それ、いつもとどう違うの」と唇を尖らせながら、とりあえずありがたく悠馬の愛車の後ろに座る。

すると、悠馬がペダルを漕いで自転車が前進を始めた。



梅雨の訪れを予感させるような湿った風が頬を撫でる。

横断歩道で赤信号につかまって、自転車は小さなブレーキ音と共に止まった。

車道を数台の車が行き交い、それを眺めていたら、悠馬が「あのさ」と話しかけてくる。


「お前、昨日のアレ、冗談だと思ってる?」

「……冗談なら自転車乗ってない」


正直、昨日の悠馬の言動や、そこに含まれてるであろう気持ちを考えると、未だ夢か何かじゃないかと思う自分がいる。

だけど、その気持ちが本当なら、相手は悠馬だし、避けたりしないようにしたいと思ってた。

それが全部冗談だっらたならたちが悪過ぎる。