ここで余計な事を言えば、もっと先生を心配させてしまうかもしれない。

そう思って笑って誤魔化すと、椎名先生は小さく息を吐いて。


「朝比奈の言う通り、バカだな、宮原は」


喋りながらベッドに座る私に近づいて来る。

そして──


「本当に、無理はするなよ」


優しい声で言うと、手を伸ばし、くしゃりと私の頭を撫でた。

ふわりと、いい匂いが鼻をくすぐる。

先生がいつもつけてる香水の香りだ。


「だから、大丈夫ですって」


心配ないと笑ってみせても、先生は困ったように微笑んで。


「宮原は、もっと甘えてもいいんじゃないか?」


言って、頭をもう人なでしてくれる。

……多分、家のことなんだろう。

そう思い至って、私は苦笑するだけにした。

頑張る自分や先生の気持ちを、否定したり無下にしたくなかったから。


と、その時だった。