まさか、そんなはず……ないよ。

ありえない、あってはいけないと、ブンブン頭を横に振った直後。


「お前さ」


私の右手首を悠馬が掴んだ。


「な、に? ちょっと痛いよ、ゆう──」

「今、誰のこと考えてた?」


いつもよりトーンの低い悠馬の声に、私は思わず身を固くする。


「だ……誰って」


何で、悠馬に伝わったのか。

付き合い長いから?

だとしたら、幼なじみって恐ろしいなと感じつつ、答える事に戸惑っていると。


「遥の頭の中にいたやつ、誰?」


悠馬の表情が段々と怒りを含んでいくのがわかる。

何で?

何でそんな怖い顔しちゃってるの?

意味わかんなくて、私はただ、悠馬を見つめ返すことしかできなくて。


「遥」


名前を呼ぶ悠馬の瞳が孕むのは、一体何?

それよりも、この状況は何事?