やばい。

昨日に引き続き、この事実は私の顔の筋肉を緩めてしまう。

宝生先生の前でニヤニヤしたら絶対突っ込まれると思い、私は「あんなに美味しそうだったのに」と口にしながら作業に没頭する振りをするように、俯いて顔を隠した。

幸い、宝生先生には気付かれずにすんだようで。


「でしょう? 甘いものは得意じゃないのでって返された挙句、甘党の教頭に食べられちゃったのよ」


嫌になっちゃうと苦笑した宝生先生。

なんていうか……もしかして、もしかすると。


「宝生先生は、椎名先生のことが好きなんですか?」


頭の中に浮かんだ疑問がするりと口から零れる。

本当はこんなこと聞くべきじゃないのかもしれない。

もし宝生先生が椎名先生を好きだとしても、私には関係ないわけだし、きっと宝生先生もいい気持ちはしないかもしれないのに。

声にしてから少しの後悔を感じて。

文句を言われたら謝ろう。

そう思った矢先──


「いいえ? お近づきになりたいだけよ」


宝生先生は特に嫌な顔もせず、すんなりと答えた。

しかも、本音を隠そうともせずに。