さっきから眉を寄せて少し唇を噛んでる悠馬は、どう見ても不機嫌そうだ。
私の指摘に、悠馬はあからさまにムッとして。
「……何でもないから気にするな」
いやいやいや。
言ってることと表情が矛盾してますから!
だけど、本人が何でもないって言うんだし、ここで突っ込んで言い合いみたいになるのも嫌だから。
「そう? じゃあ、とりあえず学校まで甘えさせていただいてもいいですか?」
私はいつもの調子で話しながら、自転車の後ろに座らせてもらう。
そうすれば、悠馬は溜め息を吐いただけで、何も言わずにペダルを漕ぎ始めた。
爽やかな朝の空気を切って前へと進む自転車。
流れる景色を見送りながら私は、椎名先生に何かお礼をしなくちゃと、そんなことを考えていた。