「じゃあな!」


悠馬が自転車を跨いだまま私に手を軽く振って見せる。

私が「ありがとね」と手を振り返せば、悠馬は少しの笑みを残してから、ペダルを漕いで去っていった。


途端、疲れているのか身体が何だかだる重く感じて。

私は玄関のドアを開けると、靴を整えることもしないでリビングのソファーに腰を下ろした。

そして、鞄を適当に置くと横になる。

程よい固さのソファーは疲れた身体を癒してくれるようで、私はそっと瞼を閉じた。

けれど──


カチカチカチ。


耳に届くリビングの壁掛け時計の音が、私の心を不安定にさせていく。


静かな家の中には、私しかいなくて。

物音は、この時計の針が時を刻む音と、時折外から聞こえてくる車が通る音だけ。



ああ……私は


今日も1人だ。