時は流れる。

幾つもの出会いと別れを繰り返しながら。

幾つもの喜びと悲しみを内包しながら。


住み慣れた街を離れ、四季を越え。

季節は春──


「せんせー! 聞いてくださいよ!」


昨年から私を慕ってくれている生徒が、今日も数学準備室にやってきた。


「まーた彼氏と喧嘩?」


テストの採点をする為に答案用紙をデスクに置きながら、私は来訪者を振り返る。

彼女は、私も纏っていた制服のスカートを翻しながら椅子をひいてドスンと座った。


「もう、あいつ本当疲れる」


唇を尖らせ、机に突っ伏す彼女を見ながら私は苦笑いを浮かべた。

それが不服だったようで、今度は頬を膨らませた彼女は。


「正直、恋ってよくわかんない」


愚痴を零すと、深い溜め息を吐いた。