静かになった病室で、先生は溜め息を落とすと本を閉じ、膝の上に置く。
そして、無言のまま窓の外に視線を向けて……
『大丈夫。俺を強くしてくれた宮原なら、俺みたいにはならない。でも……泣かせては、しまうだろう』
寂しそうに、消え入りそうな声でひとりごちる。
『……アキに言われなくも、気づいてるよ。だからこそ……』
先生は、一度言葉を切って眉を苦しそうに寄せて。
『告げれるわけがないだろ』
慟哭しているような声で。
『好きだと、そんなひどい言葉を残して逝けるわけが、ない』
本音を吐露し、俯いた。
『すまない……宮原。俺はもう、約束を果たせないらしい。だけど、どうか……』
先生が、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳が、カメラに向いて。
私と、視線が合った。
『前を見てくれ』
「っ……先生っ」