──午後になり、家に葛城さんが迎えに来た。

用意した花を手に車に乗り込んで、互いの近況等を話しながら走ること1時間弱。

緑豊かな郊外に、先生の眠る墓地はあった。

花束を手に車を降りて、水桶やお線香を用意すると、葛城さんに案内されながら墓石の並ぶ墓地の中を歩く。

やがて、濃い灰色に染まる和型のお墓の前で立ち止まって。


「ここが要の墓」


葛城さんは、水桶を置くとお墓に向かって「要、連れてきたよ。お前の可愛い遥ちゃん」とからかうように口にした。

墓石には椎名家と彫刻されていて、横には先生のご両親であろう名前の隣に、"椎名要"と、先生の名前が彫られている。

ここに先生のお骨があるはずだけど、実感は湧かなかった。

胸にあるのは悲しい思いと、会いたい、声が聞きたいというワガママな願いだけ。


「遥ちゃん、お花入れてくれる?」

「あ、はい」


促され、私は手にしていた花を花立に飾った。

先生の為にと選んだ花。

先生は、気に入ってくれるだろうか。