「バカだなぁ、先生。七瀬さんが罰なんて与えるはずないじゃない。先生が好きになった子は、そんなことしないよ」


だけどきっと、そんなの先生もわかってたんだよね。

そうして責めないと、自分を許せなかったんだろう。


「……私、もう少し早く生まれたかったな。そうすれば……先生の病気なんて、私がやっつけてあげたのに」


私の存在が、先生にとって意味のあるものだというなら。

もっと早くに出会えていたなら。


先生は今日も、数学準備室でテストの採点なんてしてたのかもしれないのに。


涙で滲む視界の中、先生に重ねた手にキュッと力を込め、握った刹那──


「…………」


最初は音にならない細い空気が先生の唇から漏れて。

次いで。


「……ら……」


眠る先生の唇が


「みや……は、ら……」


うわごとのように


私を、呼んだ。