それから、その後も病院に着くまでに色々聞いた。

唯一の身内と言える叔母さんには高校を卒業するまでお世話になってたことや、学校を休んでいる間は入退院を繰り返していたことを。

辞めることになったのは……


余命を


宣告されたからだと。


余命。

その言葉が重くのしかかる。

遅かったという葛城さんの言葉を、現実として受け止めなければならない響きに、呼吸を忘れていた私は深く息を吸い込んで酸素を取り入れた。


油断すれば、いとも簡単に落ちてしまう。

深くて暗い、悲しみの海に。

のみ込まれ溺れてしまう。

これから目の当たりするだろう、現実の痛みに。


私まで冷たい海に囚われてはいけないと唇を噛みしめれば、耳に届いた葛城さんの声。


「持って2ヶ月。だけど、そう言われても要は諦めてなかった。約束をしたからって」


遥ちゃんが、要の手を引いて立ち上がらせたんだよ。

優しい声で言われて。


『お前の存在は、俺にとって意味があるものなんだよ』


海で微笑んだ先生を思い出し、堪えきれず涙が溢れてしまう。

慌てて口元を両手で押さえたけど、零さずに済んだのは嗚咽だけ。

頬には、涙が伝い流れてしまった。

そんな私に葛城さんはもう何も話すことはなく。

やがて、車が辿り着いたのは……


舞子が入院していた病院だった。