疑問の声さえ出てこない。
何も言葉にならなくて、ただひたすら、ガンという病気の重さを心の中で測る。
それは、私が知り得る限り、とてもとても重いもので。
肺がんだと教えてくれた葛城さんの声に、気持ちが深く深く沈んでいく。
ショックで手が小さく震えて、呼吸の仕方さえわからなくなって。
そんな中でも思い出したのは、先生が持っていた薬と、 時折していた咳のこと。
気管が弱いみたいに言ってたけど、誤魔化してたんだと、ようやくわかった。
どうして……どうして先生の背中には、大きくて辛いものばかりが乗っかるのだろう。
「せっかく、前を向けたのに」
震える声で呟くと、葛城さんが「そうだね」と頷いた。
葛城さんが言うには、先生はずっと本格的な治療を拒んでいたらしい。
病気は自分への罰だからと。
「だけど、あいつは君のおかげで生きることを選んだ。でも、遅かったんだ」
葛城さんの発する声のトーンが悲しみに落ちる。
私の心臓が、嫌な音を立てて。
「君と出かけた日の夜、要は倒れたんだよ」
大きく打った。