先生が、私に関して後悔をしている?


「七瀬の名前じゃなく、君を呼んでるんだ」


ダメ。

さっきから葛城さんが教えてくれる言葉の意味が繋がっていかない。


「待って話がよく……」

「オレ言っただろ」


困惑する私の言葉を葛城さんは遮ると、憂色を秘めたような真剣な眼差しで……


「最後まで、そばにいてやってって」


そう言って、静かに私の言葉を待った。

『最後まで』

確かに以前、私が椎名先生との距離感で悩んでいた時に葛城さんに言われたことがある。

ただ、私が捉えていた最後とは卒業する日だ。

それを葛城さんに伝えると、彼は「ああ、そっちか。そうだよね。普通の毎日を送ってたらそうなるか」と、顔を歪ませながら笑った。

すると、ずっと隣で会話を聞いていた悠馬が、葛城さんの話し方に痺れを切らしたようで。


「つか、早く肝心なこと言えよ。椎名はどこにいて、何してんすか」


ズバリ、問い掛ける。

そんな悠馬に葛城さんは苦笑してから瞳に陰を落とし……


「要はね、ガンなんだよ」


表情を悲しく曇らせて、普段は聞き慣れないその病名を口にした。