「あ、あの、なんか……すみま、せん」


どこから聞いていたのかはわからないけど、とりあえず謝ることを最優先にした。

私の謝罪に、椎名先生は顔色を変えずに形のいい唇を開いて。


「気にするな。誰にでも好かれ、受け入れられる。そんなことはありえないだろう。だから俺は気にしない」

「は、はあ」


くるみが言ったのはそういう軽い感じの好意じゃないんだけどな。

恋うんぬんのところは聞いてなかった、とか?

それとも先生って、そっち系の話は鈍いんだろうか。

いや、ちゃんと恋したこともない私がそんな風に思うのもなんだけど、こんなにイケメンなら相当モテるだろうに。

彼女だって……いる。よね?

なんて、1人で考えている間にも、椎名先生は話を続けている。

しかもその内容が……


「だが、誰かの話をするならもう少し声を落とす方がいいな。トラブルになりかねないぞ」

「……ほら、すぐ説教」


さっきくるみにも言ったことで。

私のぼやきにくるみがおかしそうに小さく吹き出す。

ここでようやく椎名先生が眉をピクリと動かした。