太陽に照らされた先生の髪が風に揺れる。

七瀬さんが亡くなった海で微笑む先生は、どこか少しスッキリしたようにも見えて、私は笑みを浮かべた。

次に来るとき、この場所はもう七瀬さんを偲ぶ為だけの場所じゃなくなった。

ここは、宮原遥と約束した場所、にもなったのだ。

だから、先生はここに来ても悲しいだけで終わることはない。

これからは、必要以上に海を怖がることはないだろう。

……私も、ちゃんと向き合わないと。

私の家族と。


それから、私たちは帰路についた。

駅構内、別れ際。

改札の前で、先生は私に「帰れるか?」と聞いてきた。

それはもちろん、無事に家に……という意味ではなく。


「うん。帰って、話してみる」


家出のこと。


「そうか。悪いくせ出して頑張り過ぎるなよ」


先生からの忠告に私は苦笑しながら頷いた。


「万が一また家出になったら先生、よろしくね」

「遠慮するよ」


先生が呆れたように笑って、私も笑う。

そして。


「先生、ありがとう。また明日」

「ああ。またな」


手を振り、私たちは別れ。

翌日──


「えー、突然だが、椎名先生はしばらく休むことになった」


椎名先生は、学校に来なかった。