「ごっ、ごめんなさ──」



ごめんなさい、と、最後まで言えなかったのは。


──キュッと。


一瞬、先生の腕に力が込められて。


引き寄せ、抱き締められたから。


でも、それは本当に一瞬で。

先生は、何事もなかったように私を支えながら体を離した。


「気をつけろよ」

「は、はい……」


宮原はいつも危なっかしいな、なんて口にしながら歩き始めた椎名先生。

私は、まだ混乱気味のまま、先生の後ろをついて歩く。

き、気のせいだった?

先生の事を想うあまり、都合のいいようにとってしまったのかもしれない。

だって冷静に考えてありえないから。

先生が私を抱き締めるなんて。


「そういえば宮原」

「はいぃっ!?」


振り向き声をかけてきた先生に、私は体を固くし声を裏返らせてしまった。

こんな時、普段の椎名先生なら冷たい言葉を投げてくるか、呆れた態度で私を見るかしそうなものなのに。

今日に限って先生は、クックと肩を揺らして笑った。

そして。


「悪かったな」


謝られる。