潮風が2人の髪を靡かせる。

風で散らばる髪を手で押さえる私は、先生が隠していた痛みを黙って受け止めてあげることしかできない。

何を言っても下手な慰めにしかならない気がするから。

だから、私は何も返事ができないまま、先生の隣で、その横顔を見つめていた。

すると、先生の視線が再び私の姿を捉えて。


「そう気づけたのも、宮原のおかげだな」


ありがとう。


慈しむように微笑まれて、私は胸を高鳴らせながら目を丸くした。


「私、特に何もしてないですよ?」

「そうだな。でも、お前の存在は、俺にとって意味があるものなんだよ」

「何、それ」


ちょっと勘違いしてしまいそうな言葉に思わず視線を外してしまう。

ドキン、ドキン。

忙しなく騒ぐ心臓を落ち着けようと、私は俯いて足元の砂に指をそえた。

そして、努めて明るい声を出し「どんな意味ですか?」と、勇気を出して、聞いてみる。

そうすれば、先生は私の隣に腰を下ろして。


「それは秘密だ」


目を細め、くすりと小さく笑った。