……私は、先生の1番にはなれないけれど。
「先生。今日、天気いいし、どうかな?」
先生を応援する気持ちは1番だから。
「何がだ?」
「海に行くの」
背中を押してあげたいの。
先生が海を前にしても、微笑みを浮かべられるように。
「……俺は海には」
私は、先生の言いたいことを察し、頷く。
そして、わかった上で先生の目を真っ直ぐに見つめた。
「ねえ、先生。過去を振り返るのは悪いことじゃないと私は思うんだ。だって、未来を見るのには必要かもしれないから」
先生は何も言わず、私の声に耳を傾けてくれていて。
だけどこの先、関係ないと、以前のように言われることも覚悟して、私はチュニックの裾をキュッと握り、言葉を続ける。
「だけど、囚われてしまうのはダメ」
ちゃんと目をあけて見て。
耳を塞いでる手をとって。
「七瀬さんは、いつまでも先生を苦しめるような人だったか、それを望むような人だったか、思い出して」
悲しい死を見るのではなく、生きていた笑顔の彼女を思い出して。