先にテンパリを経験しているからか、私には今の状況を楽しめる余裕があって。


「そうみたいですねー」


ニコニコしながら答えてみた。

すると、先生はくしゃくしゃと髪を掻き毟り溜め息を吐いたあと「……悪かった。その……手、まで」と謝罪する。

手は私が触れたのが原因なんだけど、そこは私だけの秘密。

先生には申し訳ないと思いつつも、手の話にはあえて触れず。


「先生、寝癖」


あらぬ方向に跳ねてる先生の髪を指摘し吹き出した。


「あ、ああ。ちょっと風呂入ってくる」

「はーい」


跳ねた髪の毛を気にしながら、クローゼットから着替えを取り出してバスルームに向かう椎名先生。


……なんかもう、葛城さんには文句じゃなくて感謝を伝えたいかも。

今まで見たことのない椎名先生を昨日の夜からたくさん見れて、心が躍りっぱなしだ。


慌てたり、ちょっと恥ずかしそうに寝癖を気にしたり。

先生のこんなところを知ってるの、私だけならいいのにな。

……七瀬さんは知っていたんだろうか。

想像して、今も先生の心にい続ける彼女に、ちょっぴり嫉妬。


「……支度しよ」


恋が生み出す醜い感情を追い出すように声にし、私はベッドから降りるとトートバッグから着替えを取り出したのだった。