それはきっと、生まれたばかりの赤ちゃんが、その小さな手に指で触れると反射的に握るのと同じようなものなのかもしれない。

けど、それでも嬉しかった。

時々、私の頭を撫でてくれる優しい先生の綺麗で大きな手が、今、無意識のうちだとしても、私の手を包んでくれている。

大好きな人の温もりを、こんな風に感じられることが、とても嬉しい。


好き。


声にすることはなく、想いを胸に秘め、ただ縋るように手を握る。


心が砕かれるような辛い現実に立たされても、椎名先生がいる。

声が聞けて、隣にいられる。

それは、とても、とても幸せで。


先生から聞こえるゆるやかな寝息。

私は、それを耳にしながら瞼を閉じる。

やがて意識はぼやけ、深く安らかな微睡に落ちていった──‥