──結局、先生はリビングのソファーで寝ることになり、私は先生のベッドを借りて寝ることになって。


「……やばい」


深夜2時過ぎ。

私はこの状況に緊張して眠れないでいた。

電車の音はとうに聞こえなくなっている。

静かな夜の世界で、私だけが取り残されたような寂しい感覚に寝返りをうって壁を見つめた。

ふわりと、先生の香りがしてトクンと心臓が高鳴る。

くすぐったいような幸せな気持ちに、私は瞼を閉じた。

このまま眠れたらいい夢が見れそう。

でも、私の脳は意地悪にも親のことを思い出させた。


実は、先生と葛城さんと食事をしていた時、家からの電話があったらしい。

気付いたのは先生の家に来てから。

本当は連絡をとるつもりはなかった。

でも、先生に余計な迷惑がかかるのは困るから、今日は帰らないとだけ父あてにメールを送った。

父からはもっと早く連絡しないさいという返信があり、私はそれには何も答えていない。

今の私にできる、精一杯の小さな反抗。