「数学頑張ってるからオマケしてくれってお伝えください」
「無理だな」
「ですよねー」
私の軽いジョークを真面目に返した椎名先生は、いつも通りだ。
2人でいることを意識してるのって、私だけ……なんだろうなぁ。
それにしても……家に帰ってまで仕事してるんだ。
大人は宿題やテストがなくていいなぁって時々思うけど、こうして仕事してる先生を見てると、人によるのかなって気付かされる。
「……先生は、仕事が好きなの?」
家でも頑張って仕事をしている先生は、教師という仕事が好きで、だから続けてるんだろうか。
うちは、父も母も仕事が好きなんだと思う。
だから、仕事が1番で私や舞子のことは二の次。
もし、先生も仕事が好きなら、将来家庭よりも仕事優先になるのかな。
子供の誕生日を……忘れてしまうほどに。
問いかけた私に、椎名先生はタイピングしていた手を止め、私に顔を向ける。
そして、少し考え込むように視線を横に移してから。
「教師になることは、俺の夢だったんだ」
先生のことを教えてくれた。