「昔から素直じゃないんだ、要は」

「みたいですね」


葛城さんと2人で笑い合う。

そこに、店員さんがやってきて、葛城さんと椎名先生のカップにコーヒーのお代わりを入れた。

湯気のたつコーヒーを見つめる葛城さんは、片手で頬杖をつきながらふと私を見る。


「もしかして、家には帰りたくない、みたいな感じかな?」

「えっ、何でわかるんですか?」


驚いて目を丸くした私に、葛城さんは微笑んだ。


「ま、連絡した様子もなかったし、荷物見ればなんとなくね」


葛城さんは、人には悩みが色々あるよねと深くは追求せずコーヒーを飲む。

そして「そうかそうか、家出かー」とニマニマしていたけど、その理由はわからないまま私たちは店を出たのだった。


帰りの車内で、葛城さんは私の家出については一切触れてこなかった。

椎名先生にも話した素振りはなかったし、大人だな、ありがたいな、なんて思っていたんだけど……


「はい、到着。……よし、遥ちゃんも降りて」


葛城さんは、椎名先生が住むマンションの前に車を止めると、椎名先生が降りたの確認してから私にも降りるように言った。