「それなら、今度新作渡してもいい?」


くるみが言う"新作"とは、彼女が描いている少女漫画のことだ。

くるみは小さい頃から漫画家になりたいという夢を持っていて、私と初めて会った中学1年の時にはすでにたくさんの漫画を描いていて、よく読ませてくれた。


「もちろん! 喜ぶよ」


舞子はくるみの描く物語が好きで、一番のファンではないかと思う。

病室の棚にも、コピーしてもらったくるみの漫画が並んでいるし、何度も読み返していた。


「それじゃあ、次行く時連れてってね」


くるみの申し出に、私は笑みを浮かべて了承する。


幼い頃から入退院を繰り返している舞子には友人が少なく、まだ小学生ということもあってかお見舞いに来る人も少ない。

平日のうちの3日間は私。

日曜日は両親。

それ以外だと、舞子の病気が発覚する前に、舞子が仲良くなった幼稚園の時のお友達が1人。

退院と入院の間に小学校に通い、その時に出来た気が合うらしいお友達が1人。

あとは時々、悠馬やくるみが顔を出してくれるくらいだ。

舞子は小児病棟の友達がいるから楽しいと言ってるけど……

本当は、寂しいのを我慢してるのを私は知っている。

時々、ベッドの上で1人静かに泣いているのも、知ってる。