母との喧嘩で、父は甘えすぎだと私を叱った。

もう高校生なんだから、と。

誕生日くらいでカリカリするな、と。


母だけでなく、父もわかってくれない。

そんな家に、私の居場所はない気がして……


土曜日の午後、両親が舞子のお見舞いに出かけたのを確認すると、私は大きなトートバックに着替えやスマホの充電器、その他お泊まりセットを詰め込み、幾何学柄のニットカーディガンを羽織ると家を出た。

行き先は決めてない。

だけど、しばらく家には帰りたくなくて、とりあえずまん喫あたりで過ごそうかと思いながら、憎たらしいくらいに清々しく晴れ渡る空を見上げた。

そしたら、なんだか無性に椎名先生に会いたくなって。


「学校にいるかな……?」


土曜日だし、もしかしたらいないかもしれないけど、予定があるわけでもない私は、とりあえず学校へ向かうことに決め、バス停を目指した。

それから数十分後──


「しまった」


私はある事に気付き、高校の正門前でピタリと足を止めた。