母は冷蔵庫から麦茶と、食器棚からコップを取り出した。

出張の予定以外には何も言ってこない。

多分……明日がなんの日かわかってないんだ。

そう、だよね。

去年も一昨年もそうだったし。


「お母さん」

「なに?」


目を合わせようともせずに返事をする母。


「明日、私の誕生日だよ」

「……ああ、もうそんな時期だったのね。そのうち時間がとれたら外食でも行く?」


お惣菜ののったお皿をテーブルの上に置きながら、いかにも片手間といった感じで提案される。


「……去年もそう言って、結局行ってないよ」

「そうだった? でも、仕方ないでしょ。お父さんもお母さんもあなた達の為に仕事してるんだから」

「私たちの……為?」


うん、そうだよね。

だから我慢してきたよ。

サポートしようと頑張ってきた。

──だけど、本当に私……いつからこんな毎日が辛くなってたんだろう。