多分……バレてるんだろうなぁ。

やっぱりくるみには正直に打ち明けた方がいいのかも。

そう思った時だった。


「生徒と教師の距離感を間違えないようになさい」


いきなり聞こえてきた女性の声に、私の肩が跳ねる。

まだ開けていないペットボトルを手に視線を巡らせると、声の主はすぐに見つかった。

白いシフォンシャツに紺色のタイトなスカートを纏ったその人は、養護教諭の宝生先生。

彼女は艶やかな唇に薄く笑みを乗せながら私に忠告する。


「きっと引きずられてるのよ。好きになってはいけないという甘いスパイスに」

「わ、たしは、別に」

「好きじゃない? そんな風には見えなかったわ。少なくとも、先週の保健室ではね」


宝生先生の言葉に、私は口をつぐんだ。

多分見られていたのだ。

先生に手当てしてもらっているところを。


宝生先生は下駄箱からリボンがあしらわれたスカートと同じ色のハイヒールを取り出すと、それを床に置きながら言う。

いつか、互いに痛い目を見る前にその想いは心の奥にしまっておきなさい、と。