今から8年前、高校3年生の夏──


椎名先生がまだ、生徒としてこの学校に通っていたその夏、先生は男女数人のグループで海水浴に出かけたそうだ。

メンバーの中には、本屋さんで会った葛城さんもいたらしい。


「空は晴れてて海日和だったけど、風が強くて……そのせいで、波が少し高かった」


それでも、先生達は構わず海に入って遊んだ。

波の高さごと海水浴を楽しむ。

その気持ちは私にもわかる。

ちょうど去年の夏休みの私がそうだった。

夏らしい事をしていないと悠馬に零したら、急遽海に行く事になって。

くるみも誘って悠馬のクラスメイトと4人、太陽が照りつける真夏の海を楽しんだ。

その日の波は高くて、サーファーも沢山いたっけ。

波打ち際の方にいると高い波に足を取られてしまうことも多かったけど、海水浴場ではそれを気にせず沢山の人達が遊んでたし、私もせっかく来たんだからと普通に海に入っていた。

事故に遭うなんて考えもせず。

それはきっと、当時の椎名先生達もそうだったんだろう。

けれど、不幸にも──


「ライフセーバーが慌ただしくしてるのを遠目で見て、何かあったんだろうって友達と話してた。まさか、救助されているのが……七瀬だとは、思いもせずに」


七瀬さんには、起きてしまった。