キッチンカウンターに置かれた食パンを一枚焼いて。


「いただきまーす」


私1人には広すぎるテーブルにつくと、大好きなイチゴジャムをたっぷり塗ったそれを口に入れた。

口内に行き渡る甘酸っぱさを堪能しながら、ふとリビングに目をやると、コーヒーテーブルの上に数枚の書類らしきものが乗っているのに気がつく。


「……忘れ物?」


首を傾げ、パンを噛みながら椅子を降りて確かめに向かったけど。

タイトル見てもなんだかよくわからない。


「ディベートって何」


そして、父のか母のかもわからない。

というか、忘れ物だとしても、これから学校がある私が届けることは不可能なんだよね。

私は書類を揃えて再びコーヒーテーブルの上に戻すと、またテーブルと向き合い食パンをかじった。

それから、冷蔵庫の中で冷えていた麦茶を飲んで喉を潤すと、スマホを手にしてひとまず母にメールする。

返事が来たのは、私が家を出てすぐだった。

どうやら父の物だったようだ。

けれど、多分忘れても問題のないものだろうとの文章を読み、私は「了解です」と返すとスマホを鞄にしまった。