「あたしらプールサイドの掃除しないとならないんだけど、外せない用事できちゃって。悪いんだけど、掃除代わってもらってもいい?」
……突然の依頼に、私の頭に疑問符が浮かぶ。
どうして知り合いでもない他クラスの私に頼むのか。
予定はないけど、代わる理由もないので戸惑っていたら、つり目の子が笑顔を消し、一歩私に詰め寄る。
「あんたさ、最近椎名に近づき過ぎ。でも、これやれば今までのは目を瞑ってあげる。てことで、いいよね?はい、ありがとうよろしくねー」
押し切られ、呆然とする私を置いて、彼女たちは遊びに行く予定を口にしながら廊下の向こうに消えて行った。
……つまり、彼女たちは椎名先生のファンで。
私のことが気に食わないから、自分達が課せられたプールサイドの掃除を私に押し付けた……と。
彼女たちからすると、掃除も免れ、嫌がらせもできて、さぞ心は晴れやかだろう。
そして、押し付けられた私はそこそこのダメージを食らい、溜め息を吐き出した。
やらなければきっと更なる嫌がらせを受けるはず。
これ以上の揉め事を避けたい私は、仕方なくプールへと向かった。
どうやら、プールサイドの掃除は彼女たちへの罰だったらしい。
何をしたのかまでは教えてもらっていないけど、掃除を言い渡したスキンヘッドがトレードマークの水泳部顧問、立川先生が盛大に溜め息を吐いて肩を落としていた。
そして、私は無関係だから帰っていいと言われたんだけど……
「特に急ぐ用事もないですし、手伝います」
後で彼女たちから難癖つけられるのも困るので、私はデッキブラシを手にし、掃除に取り掛かかることにした。