──放課後。

いつものように図書室でまったりしていた私は、下校時刻15分前に流れる放送委員の声を合図に席を立った。

特に借りたい本もなく、鞄だけを手にして冷房の効いた図書室をあとにする。

廊下は生暖かい空気に包まれていて、夏が始まったなぁとのんきに考えながら、生徒玄関を目指し歩いていたら。


「あ──」


中庭の隅、日陰に立つ椎名先生を見つけた。

その途端、弾む心。

ああ、そうだ。

ご褒美、何にしようかな。

一応、どんなものならリクエストOKか聞いてみよう。

先生と話したい気持ちもあって、私はいそいそと階段を降りた。

そして、先生のいる中庭が見えてきた時……


私は、足を止めてしまった。


その理由は、先生がまた寂しそうな顔で中庭を見つめていたからだ。