活発なだけが取り柄の俺と、天然ボケで優しい雪美にクールビューティーな咲奇。


俺たち三人は小中校時代の仲良し三人組だった。

登下校はもちろんのこと、夏休みの冒険や悪戯も、それがバレて怒られる時も三人は一緒だった。

しかし、そんな関係も中学卒業を機に終わりを告げることになる。


俺と雪美は、電車で20分程かかる都会の同じ高校に進学することになったが、咲奇はずっと遠くの町へ引っ越すことになったのだ。




『サキッちと逢うのは、去年の年末に御見舞いに来てくれた以来だな〜』

嬉しそうに目を細める雪美に、俺は申し訳無い気持ちでいっぱいだった。

高校に入学して数ヵ月過ぎた頃、雪美は一部の女子グループに目をつけられてイジメを受けるようになっていた。


イジメは日々エスカレートしていき、雪美はだんだん笑わなくなってしまっていた。


そんな雪美の状況に気がついていたにも関わらず、俺はクラスが違うのを良いことに、雪美を助けようとはしなかった。


それどころか、イジメられっ子と仲良しだと思われることを恥だとすら考え、雪美を避けるようになっていた。


登下校の電車の席も離れ、一緒に並んで歩くこともなくなった。


きっと、雪美はそんな俺の心情を全部を知っていたのだろう。
彼女の方から俺に近づいて来ることはなかった。

そんなある日、雪美が自宅から病院に救急搬送された。


その報せを聞いた瞬間、
"自殺未遂"の文字が俺の脳裏を過り、背筋が凍りつくような感覚に襲われたのを覚えている。


だが、事態はそれよりも深刻だった…。


雪美は重い心臓病に蝕まれていたのだ―――…。





『あ!学校が見えてきたよー!』


不意に響いた雪美の声に顔を上げると眼前に、今夜の目的地である校舎が、俺たちを出迎えるようにして星空の下で聳えていた。


『懐かしいだろ』


俺の言葉に、雪美は大きく頷く。
俺たちが小中学生時代を過ごしたこの校舎は、この小さな田舎町では一番大きな建物だ。


『よし、中に入るぞ。
咲奇が校舎の裏口を開けて待ってるはずだ』


『え?また…?』


雪美が何かを思い出したように、悪戯な笑みを浮かべた。