「キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン―…」




チャイムが告げた2時限目の休み時間、教室内はクラスメートたちの雑談や笑い声で溢れかえっていた。


『お揃いのシャーペン買っちゃった』


私はそう言って、シャーペンを筆箱からおもむろに取り出すと、隣の席に座る秋夜(シュウヤ)は、一瞬驚いた表情で私の顔を見つめた。


大好きな秋夜がいつも使っているものと同じシャーペン。
こんな些細な事でも、同じ感触を共有できているような気がして幸せな気分になれる。


『そういえば麻美子(マミコ)さ、この前遊園地に行きたいって言ってたじゃん?』


ふと、秋夜は照れたように視線を机に落とした。

遊園地?
ああ、そういえば…
一昨日の昼休みに、そんな話しを友達としていたような覚えがある。


これって…もしや、デートのお誘い…?
思わず高鳴る胸の鼓動に、私は息をのんだ。




『江本さん』


突然聞こえた背後からの声に、私は心臓が爆発するかと思った。


『何だ…蒼ノさんか…。びっくりさせないでよ』


声の主は私の後ろの席にいる蒼ノ咲奇(アオノサキ)だった。
物静かな美人で成績も優秀なので、男子や教師から絶大な人気をほこっている女子生徒だ。


その反面、一部の女子たちからは嫌われており、私も、何を考えているのかよく分からない彼女のことが少し苦手だった。


『何か用?』


私は愛想笑いを浮かべながら蒼ノさんを見つめたが、内心は苛立っていた。

何故なら、彼女が声をかけてきたせいで、恥ずかしがり屋の秋夜が言葉を詰まらせてしまったからだ。


『シャーペン、落ちたよ』


蒼ノさんはポツリとそう言って、私の足下へと指を差した。


『え?』


見ると、いつの間にか秋夜とお揃いのシャーペンが床に落ちていたのだ。

『ありがとう。気がつかなかったわ』


私は素早くシャーペンを拾い上げると、それを筆箱の中にしまった。


ありがた迷惑とはまさにこの事。
本当、空気を読めない女ね。


私は自分の後頭部越しに、背後の蒼ノさんを睨みつけた。