市内だってけっこうな田舎だし、不審者なんて出ないよと笑いながら言えば、そういう問題じゃないし、と言われた。

どういう問題? と聞けば「さあね」と言ってくる。なんだ、この人は、

自転車に乗ってしまえば、十分もかからないところに住んでいるのに。



「佐々木はさ、どこ受けるの?」

「俺? 俺は、N大かなー。工学部に行きたいから」

「そうなんだ」

「俺ね、夢なの。自分がつくった飛行機飛ぶの、見るのが」

「あー、だから紙ヒコーキもすきなんだ?」

「ま、そういうことかな~。でもやっぱ、紙ヒコーキ飛ぶのがちっさい時から不思議でたまんなかったわけ。

ただの紙なのに、あんなに遠くに飛んでくの、不思議だと思わね?」

「あ、そ、そう? ま、まあ……」

「山下は?」

「わ、私?」


「うん。いっつもすっごい勉強してるし、模試の結果にもよくのってるじゃん。
すごい行きたいとことかでっかい夢でもあんだろーなって思ったんだけど」