「え? あ、俺怒ってるようにみえた?」

「あ、それはすごく。なんともいえないほどの険相で」

私は言いながらさっき佐々木がしてたみたいに眉間に皺を寄せた顔をしてみせた。



「まじで? 本当にそんな顔してた?」と今度は笑いながら言ってくるので、私はさっきのって幻……?

と感じてしまうほど遠いものに感じられていた。





「おーい、佐々木さん、終電あるんでしょ?」

歩いていて、時計を見れば、もう十時半を差していた。

「あー、今日金曜だし、友達んとこ泊めてもらうことにしたから」

佐々木は、高校や塾のある市内には住んでいなくて、隣町に住んでいる。
毎日十時半過ぎの終電に乗合わさなければ、家に帰ることができなくなってしまうのだ。