わたしには、そんなすごい行きたいところなんて、ない。
わたしには、そんなおっきい夢なんて、ない。
わたしが勉強して、いい成績をとろうとするのは、
ただ、親に、喜んでもらいたいだけ。
ただ、親に、嫌われたくないだけ。
親に、幻滅されたりして、捨てられたくない。
忘れられたくない。
どうでもいい存在だなんて、思われたくない。
『さすが私の娘だな』
優しく頭をなでられて、そう言われる。
あの感覚を、覚えている。
自分の意思が、そこにあるわけじゃないんだ。
ただ、そんな風に言ってもらえることが、
私が一番安心する、言葉――……
「……」
自分から出した話題のはずなのに、そんな話題を振っしてしまったことに後悔してしまった。
暗がりの下、自分の夢を、夢だと口に出す、佐々木のきらきら輝いていた笑顔が、頭から離れなかったのだ。