姉の思い出 短編集


それはオーラというものかもしれないし、フェロモンなのかもしれない。通常、認識できないそれを見境なく撒き散らすことにちっとも関心をしめさないばかりか、それに当てられる存在を認識するのが億劫であるらしい。


通り過ぎた後には、屍ばかりだ。

デート中であっても、司を認めたとたん魂を持っていかれる女性が後を絶たない。ぽうっと上気した頬で、司を目で追ってしまう。



「出掛ける予定があるなら、言って」

「……たいした用事じゃないから、気にしないで」


きゅうっと絡められた指が強く握りこまれる。


「独りで歩かせるのが心配なんだよ」


美麗な顔の眉間に深い皺が刻まれる。悩める青年の頭を占めるのが、幼なじみの外出先だとはいただけない。


「司が心配することなんて、何もないから」


幼い頃から見目麗しい幼なじみは、ちょっと気を許した途端に年上のお姉様方にすぐに取り囲まれてしまう。

保育園のお散歩でさえ連れ去られそうになった過去がある。