「あ…そう
君に言うことがあった」

猫はすくっと
立ち上がったので
私も立ち上がった。


じゃないと
背が高い猫の
顔を見て話を聞く
のがつらい。




「?なんですか?」



誰かから伝言
だろうか?


誰から?




それとも私たちは
どこかで知り合ってた?



「君は……」



「はい」





「アリスは、
本当の名前、覚えてる?」



「?
……アリスですけど?」


いきなりなんだろう。


私は生まれてから
【アリス】の名前
ひとつしか持って
いないというのに。




「違う
アリスじゃなくて
本当の名前

ここに来る前の
名前」




「ここ?ここって……」


猫はため息をひとつ
ついた。


「うさぎの穴に
入る前」