傷む彼女と、痛まない僕。


 「・・・僕が誰かの『生きる理由』??」

 「少なくとも、バスケ部員にとってはね。 みんな北川の事待ってるし。 つー事で、いい加減部活行くぞ。 オレ、遅れた分腹筋背筋の回数増やされるだろうから、足押さえつけるの手伝えよな」

 『さっさと立て』と小山くんが立ち上がり、僕の後ろに回ると、無理矢理僕の椅子を引いた。

 「・・・青春が目に染みる。 涙ちょちょ切れそう」

 小山くんの優しさにうっかり本当に泣きそうになって、袖で目を擦りながら泣き真似を装う。

 「オレの目標で生きる理由は、『小学校教諭になって、子どもたちを指導しながら戯れて、可愛い奥さんもらって幸せに暮らす事』だからな。 死ぬまで青春臭い事を、平然と言い続ける予定だからな」

 『小柄なオレの小さな胸で良ければ、いつでも貸すぞ。 来いよ!!』と、小山くんが僕に向かって両手を広げる。

 「何その理由。 めっさ素敵やん。 僕、先に部活行くね」

 そんな小山くんの横をスッと通り過ぎてやった。

 「待て待てコラー」

 小山くんが追ってくる。

 小山くん、超いい事言うのにどうしてこんなにイジられキャラなんだろう。