傷む彼女と、痛まない僕。


 「あ、言っておくけど、別にオレは誰かに命がけになる人を『バカだなー』とは思ってないからね。 人生自体に意味はなくても、その人自身にとって意味のある事なら、それでいいと思うんだよね、オレは。 きっとその人にとっては『生きる理由』の対象の危機なんだと思うから。
 人は必ず死ぬ。 そう考えるとさ、この世のものなんか全部無意味なんだと思うんだよ。 後世に何かを残したところで、受け取った側の人だって絶対死ぬし。 受け取った側の人にとって、自分が残したものに意味を感じなかったら、そのまた後世に繋げずに死ぬだろうしね。 極論、この地球だって、いつかは滅亡しちゃうしね。 だから、重要なのは『生きる意味』より『生きる理由』じゃん?? 意味のない生命を全うする理由。 そもそも無意味なものに対して意味を見出そうとするのは、非生産的でしょ」

 つくづく小山くんは文系な人だと思う。 僕には到底考えつきもしない理論だ。

 「・・・・・・生きる理由・・・・何だろう」

 小山くんの言っている事は理解出来ても、結局その『理由』が見つからない。

 「イヤイヤイヤ。 何言ってんだよ。 いっぱいあるだろうが。 細かい事だと『来月発売のマンガが読みたい』とか『来週公開の映画が見たい』とかも理由だろうし。 『恋がしたいなー』とか『仲間と遊びたいなー』とかもそうだと思うし。
 『命を大切に』っていうのはさ、自分が誰かの生きる理由だったりするからだと思うんだよ。 家族とか、仲間とか、恋人とかのさ」

 小山くんが、馬鹿なコを諭す様に、よーーーく噛み砕きながら分かり易ーーーく説明してくれた。