傷む彼女と、痛まない僕。


 僕の目の前で上半身を折りたたむ吉野さんが、とても小さく見えて、

 「・・・一緒に卒業しよう。 吉野さん」

 小さな身体で色んな事に必死で耐えている吉野さんの姿に、涙が出た。

 「・・・100%同情ですよね。 その涙」

 泣いている僕を見て、苦々しく笑う吉野さん。

 そうだ。 泣きたいのは僕ではなく、どう考えても吉野さんの方なのに。

 「だって吉野さん、小さい身体でよく頑張ってるなって思って。 僕の事おぶったりしちゃうし。 ・・・泣ける」

 泣いた事を誤魔化す様に少しふざけてみると、

 「頑張りに身体の大きさ関係ないでしょ。 それに、北川くん運ぶ事なんて屁でもないよ。 ワタシ、いっつも酔ったオヤジ担いで布団まで運んでるもん。 自称80㎏のオッサンおんぶしたし。 北川くんなんて軽い軽い。 赤ちゃん抱っこするのと変わんない」

 吉野さんは、僕をちょっと馬鹿にした様な目で笑いながら、ポケットからティッシュを取り出し、僕に手渡した。

 一昨日、『ワタシ、80キロまで担げるから』と言って僕をおぶった吉野さん。 なるほど。 そういう事だったのか。