傷む彼女と、痛まない僕。



 「客室コンパニオンはね、その点割りと楽ってゆーか。 触られても服の上からだから、何とか我慢出来るし、『このお客さんとは話盛り上がらないなー』と思ったら、別なお客さんの方に移動しちゃえばいいからさ」

 服の上から触られる・・・。 酔ったオヤジの接客をするんだ。 きっと胸や脚も触られるのだろう。

 ・・・凄く嫌。 なんか、物凄く嫌だ。

 だけど、お金を稼げもしない僕に『そんなバイト辞めて』なんて、言えるわけがなかった。

 「・・・多分、コレで全部。 北川くんが知りたがってた話は。 ・・・ワタシ、自分の進路見えてないけど、でも高校退学したくないの。 ちゃんと勉強して、しっかり働いて、他人に迷惑のかからない大人になりたいの。 ウチの親みたいにはなりたくないの。 ・・・だから、今話した事は口外しないでもらえませんか?? 卒業したら、誰にどんな風に面白おかしく吹聴してもいい。 あと2年、どうか黙っていて下さい。 お願いします」

 吉野さんが僕の方に身体を向け、深々と頭を下げた。