「・・・両親の関係修復を願わないワタシは変かな。 離婚を画策するワタシは、頭おかしいのかな」
「・・・画策って??」
吉野さんの借問に答えず、質問を返す。 だって、答えられないんだ。 今まで当たり前の様に『善』だと思っていた事が、『悪』だと思っていた事が、吉野さんの話を聞いているうちに、そうじゃない気がしてきたんだ。
「・・・前にね。 区役所の無料法律相談に、母と祖父母と4人で行ったの。 どうにかして、父を家から追い出したくて。 ・・・でも、話を聞いてくれた弁護士さんに言われたの。 『お父さんは婿養子だから、色々気苦労があるのを理解すべき。 商売は景気が関係するもの。 もう少し協力したらどうだろうか』って。 この人じゃダメだって思った。 父の独立は誰もが反対したし、婿に入ったのも、父の都合だし。 景気なんて、この国に生きる人間全員が同条件でしょ??」
吉野さんはこの時も、きっと生活の改善を期待して、縋る気持ちで相談に行って、握り潰されてしまったのだろう。



