「・・・最近それが馬鹿馬鹿しくなってきてさ」
今、吉野さんの気持ちは前に向いてるわけではない様だ。
「ファミレスでバイトしてる時にね、大学生のグループがお客さんで来てね、会話が聞こえてきたんだ。 『大学4年間は、親が金で買ってくれた夏休みだ』って。 何の不自由もなく悠々自適に大学生活を満喫している人がいるのに、ワタシは毎朝早起きして新聞を配るのか??って思った。 なりたいとも思った事のない看護師になるのか??って」
『何かに期待しても打ち砕かれる』
また、吉野さんの言葉を思い出す。 期待というのは、見も知らない赤の他人の言葉で簡単に崩れてしまう程脆いものだと知る。
「『今日の食料もない難民に比べたらアナタは幸せ』って母に言われた事があるの。 それは、そうだと思うよ。 そういう人たちは、ワタシの想像なんか絶するくらいに辛いんだと思うよ。 だけどさ、発展途上国で貧困なのと、先進国で貧しいの、どっちが惨めだと思う?? ワタシだって、親が一生懸命働いて、それでも貧乏なら承服出来るんだよ。 でも、そうじゃない。 自分を納得させる術がないの」
吉野さんに、安っぽい慰めを言ってはいけないと思った。 余計に彼女を傷つけてしまうから。



