「・・・あるよ。 不要な命。 あるんだよ。 ワタシは知ってる」
吉野さんの目に、怒りが宿った。
「・・・ワタシの父親は、職人なんだけどね。 とにかくプライドが高い・・・違うな。 ただの見栄っ張りで。 人の下で働く事を嫌う性格でね、頭も悪いし人脈だってないくせに、ワタシが小学生の時に、周りの意見も全く聞かずに会社を辞めて独立したの」
そして、ゆっくり静かに吉野さんが話し出す。
吉野さんのペースを崩したくなくて、ただ黙ってじっと吉野さんの話に耳を傾けた。
「当然上手く行かなかった。 仕事の依頼なんか全く入って来ないし、他人に頭を下げて仕事を貰う事も嫌がってしないから、収入がゼロの時も多々あった。 当時親子3人で住んでたアパートの家賃も払えなくなって、母親が長女で、母親の兄弟も全員独立して家を出ていた事をいい事に、3人で母の実家に転がり込んだの。 父は次男で、長男が家を継いでいたから、そっちの家には行けなくて」
言葉を吐き出す度に、吉野さんの顔が歪む。
吉野さんに辛い話をさせて申し訳ないと思うのに、胸が痛むのに、それでも最後まで聞こうとする自分自身に嫌気を覚える。



