傷む彼女と、痛まない僕。



 準備室には、吉野さんの思惑通り誰も居なかった。

 吉野さんと2人、適当な椅子に座る。

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 そして、沈黙。

 吉野さんは、まだ話す決心がつかない様だった。


 「・・・吉野さんのバイトって、ファミレスじゃなかったんだね」

 沈黙に耐え切れなくて、僕から口を開いた。

 「・・・ファミレスでも働いてるよ。 コンパニオンのバイトがない日は」

 話し辛そうに、吉野さんが答えた。

 「・・・どうして、コンパニオンしてるの??」

 「・・・時給がイイから」

 「どうして、そんなにお金が必要なの?? ・・・もしかして、学費?? 進路、悩んでたよね??」

 吉野さんが、ブランドバックなどを欲しがる様なコには見えなくて、僕には吉野さんがお金を稼ぐ理由が、それしか浮かばなかった。