傷む彼女と、痛まない僕。

 
 吉野さんも、不安そうに僕を見た。

 「・・・・・・あの日見えた、吉野さんのパンツの色」

 小山くんの質問をはぐらかしながら、『大丈夫だよ。 バラす気なんかないよ』と吉野さんに視線で訴える。

 「・・・それは、興味深いね」

 僕のしょうもない嘘を、小山くんが見破れないわけがなく、だけど、小山くんはそれ以上突っ込んでこようとしなかった。

 小山くんは、吉野さんと僕の間に何かあると勘付きながらも、吉野さんが聞かれたくないだろう話は探らない。


 「・・・・・・はぁ」

 ホっとっしたのか、溜息なのか。 吉野さんが小さい息を吐いた。 そして、

 「連れションしようか。 北川くん」

 異性の僕に、『一緒にトイレに行こう』という有り得ないお誘いをした。

 「・・・ちょうど行きたいなと思ってたんだ」

 全くもよおしてないけれど、吉野さんの誘いに乗った。

 友達の目の前で、その人の好きな人と2人だけで話をしに行こうとする僕は、なんて嫌なヤツなんだろう。

 だけど、小山くんへの引け目より、吉野さんの事を知りたい気持ちの方が勝ってしまったんだ。