傷む彼女と、痛まない僕。




 ----------月曜日。 気分は晴れぬまま登校。

 教室に入ると、吉野さんは既に自分の席に座っていた。

 タクシー代を返そうと吉野さんに近づく。

 「おはよう。 吉野さん」

 「・・・おはよう」

 吉野さんは、一瞬僕の顔を見たけれど、すぐに視線を逸らした。

 「おはよー、北川。 具合、良くなったか??」

 吉野さんの前の席の小山くんは、今日も明るく元気だ。

 「うん。 もう、すっかり。 いきなり倒れたしてごめんね」

 「全ー然。 試合終わってからだったし、あの試合楽勝だったし」

 根っから『正義』な小山くんは、やっぱり僕を責める様な事は言わない。

 そんな僕らの会話に入ってこようとはせず、ただ頬杖をついてそっぽを見ている吉野さん。

 吉野さんは、きっちり僕の父との約束を遂行するつもりなのだろう。