傷む彼女と、痛まない僕。


 「いいのか?? あの子が退学になっても」

 父親が僕の腕を掴んで止めた。

 「そうなったら、僕も学校辞めるよ」

 父に白けた視線を送りながら腕を振り払い、そのまま病院の玄関に向かう。

 だって、おかしいでしょ。 息子を援けてくれた人にお礼をするどころか、その人の事追い詰めて。

 「ダメ!! 1人でなんて帰らせられない!! また倒れたらどうするの?? 周りに助けてくれる人がいなかったらどうするの!??」

 今度は母親が追いかけてきた。

 高校生にもなって、1人での行動を心配されるすぼらしさ。 どうしようもなく、苛立つ。

 「頼むから放っておいて!! 大丈夫だよ!! 死なないよ!! 何でそんなに信用ないんだよ!!」

 母親をも振り切って病院を出た。



 『北川くんは、病気持ちだけど病弱なわけじゃないじゃん』

 吉野さんは僕の事、弱い人間扱いしないのに。