「へぇー。 そうなんだ。 知らなかった。 北川くんって、医学部志望??」

 僕の浅ーい知識に感心して、僕を医学部志望と読んだ吉野さんも、大概浅い。

 「んー。 やっぱ自分の病気の事、もっと深くまで知りたいから医学部を考えた事もあるんだけどね。 でも、僕は温度が分からない。 患者さんの体温を感じる事も出来ないから、ちょっと自信がなくて。 僕は薬学部志望なんだ。 薬の知識を深めて、僕の病気だったり他の病気だったりの改善の糸口を探りたいってゆーか。 ・・・受かるかどうか分かんないけどね。 吉野さんは??」

 僕は2年になる時に、理系クラスを選択した。 僕の高校の理系クラスは女子が少なく、珍しい存在。 だから、吉野さんの進路にちょっと興味があった。

 「・・・・・・ワタシは・・・。 ・・・ワタシには、希望も選択肢もない。 ・・・ワタシ、今からバイトだから、もう行くね」

 吉野さんが僕の横を走って通り過ぎた。

 髪が風に靡いて、泣きそうな吉野さんの顔が見えた。

 そんな顔を見る前に『死にたい』なんて事を聞いてしまったから、気になっちゃうじゃん、吉野さん。